1)毎夏の恒例イベント、ホテルオークラ東京の展覧会「秘蔵の名品 アートコレクション展」
ホテルオークラ東京では、毎年7月末から3週間ほどチャリティー展覧会を行っています。今年は24回目で、7月30日~8月23日まで開催されていました。既に修了していますが、初日と最終日に訪問したので、レポートします。
展覧会の概要についてはこちらの記事に書きましたので、ブログでは個人的な感想などを書きたいと思います。
2)最終日に訪問。通常よりは混んでいた?
初日の夜に取材で一度訪れていますが、じっくり見るために最終日の午後に再訪問。最終日ということでか、平日にもかかわらず比較的混んでいました。
といっても、テレビなどで特番が組まれる大型展覧会みたいな、1枚見るために並ばなくてはならないような混み具合ではありません。1枚の絵に1~2人ぐらいは誰かしら見ている人がいるぐらいでしょうか?
最終日でこのぐらいなので、それより前は平日はもっと空いていたでしょうし、休日もそこまで混雑というほどではなかったと予想されます。
3)今年のテーマは「動物たちの息吹」私が気に入った作品たち
この展覧会、毎回テーマが決まっていまして、今年はホテルの場所が虎ノ門であることに因んで「動物」がテーマに選ばれたそうです。そのため、虎をはじめとするネコ科の動物たちの絵が特に多かったです。勿論、犬や他の動物もいました。
その中で私にとって特に印象が残ったのはこちら。
・竹内栖鳳《虎》宮内庁三の丸尚蔵館蔵
この作品は、残念ながら取材時も撮影不可でしたので、上の記事にも写真は載っていません。ネットで「竹内栖鳳 虎 三の丸尚蔵館」とかで画像検索すると出てきます。(会場で販売していたパンフレットには掲載)
3匹のトラがゆったりと寛いでいる6曲1双(それぞれ六つ折りにできる2枚で1組屏風)の大きな屏風です。
今回の展覧会は虎の絵が多かったのですが、取材の時にこの絵を一目見てすごく目を惹かれた。他の作品と何が違うのかな?って2回目に行った時は、じーっと見てしまいました。
それで気付いたのですが、多分、他の画家の絵は、「いかにも虎らしいイメージの虎」。それは文学から来てたり、伝統的な絵画に繰り返し描かれていたりするものから来てると思います。
岩場で吠える虎。草むらで構える虎。どれも「虎らしくて」カッコいい。
でも、栖鳳のこの虎は、左隻(左側の屏風)では2頭がゆったりと歩いていて、右隻のは自分の腕を枕にして寝ている。要するに3頭とも寛いでいる。でもそれでいながら、みんなこっちをじっと油断なく見てるんですよ・・・。
栖鳳は猛獣を動物園で写生していたはずなので、「野生の虎」ではないということなのかも知れない。でも、一見寛いでいるようでいながら、警戒心はしっかり持ってる。見てる。それがいかにも、想像ではなく観察した動物、飼いならされていても猛獣らしいって思えるんですよね。
栖鳳は「動物を描かせるとその匂いまで描く」(引用は正確ではありません)とも言われたほどの「動物画家」でもあったので、その面目躍如の作品だと思います。
でも今回の展覧会では、他にも魅力的な虎の絵が何枚もあったので、見比べられるというのがまた面白かったです。栖鳳以外の虎では、下の画像の左下、チラシに写っていた、虎の画家として有名だったという大石翠石の作品が、小品でも虎の存在感があって好きでした。
・藤田嗣治《猫》菱田春草《黒猫》
画像はチラシと、パンフレットの表紙から。
右の黒猫は今回の展覧会のアイドル。会場のキャプションやグッズにもお目見えしていました。
グッズでは特にこの黒猫の手ぬぐいが大人気で売切れ。会期末には注文販売になっていました…。可愛いだけじゃなくて、手ぬぐいの形が丁度元の絵の掛け軸の形と同じだったので、インテリアにもぴったりだったのだと思います。
菱田春草は、猫、それも黒猫の有名な絵が何枚もありますが、解説によると、特に猫好きというわけではなかったそうです。この子も警戒してますよね。背中を持ち上げて、威嚇体制。もう少し近付いたら逃げ出しそう。
それに対してフジタの猫たちは、親子で完全に寛いでいる。きっと飼っていた猫なんでしょうね。
近代日本美術で猫といえばフジタですが、今回の展覧会ではフジタの作品はこの1点だけ。今、東京都美術館で「没後50年 藤田嗣治展」をやっていますので、そちらでは沢山見ることができますよ。
この、どちらの猫も、猫らしくて可愛い。猫の絵では、橋本関雪《暖日》の、ゴージャスな白ペルシャも、ペルシャらしく気高く素敵な猫でした。
・その他
上記以外で好きだった作品はこちら。写真はチラシから。
上の絵は、女性画家・小倉遊亀の《晴日》
解説には「犬が気持ちよさそうに寝ている」みたいに書いてありましたけど、今年が猛暑のためか、「暑くてやってらんない…」と考えている見えてしまいます(笑)。でも、緑も目に涼し気で、なごむ作品です。
下の絵は、動物画家・山口華楊の《黒豹》。これはもう、フォルムがとにかくカッコいい。
こちらは、本当は先ほどの竹内栖鳳の虎の屏風と同じぐらい大きな六曲一双の屏風の一部。印刷でははっきり見えないのですが、孔雀の胴体が本当に鮮やかなブルーで、これも是非実物を見て欲しい。大きさも迫力があります。
この絵が展示してある様子は、一番上にリンクを載せたこの記事にも載せています。
4)ホテルが会場の展覧会
この展覧会の一番の特徴で魅力は、ホテルオークラという一流のホテルが会場だということだと思います。
会場も結婚式でも使われる豪華な宴会場ですし、受付もホテルスタッフ。チケットのもぎりもホテルの方。泊まっていないのに「ホテルのお客様」という扱いにドキドキ。一般的な美術館の展覧会では、なかなかちょっと味わえない体験です。
そして、ホテルだからこそ、美術館よりも逆にユルい雰囲気もあります。多分、宿泊客もいるのでしょうから、全体的にお客さんがリラックスしてる気がしました。小さなお子さんを連れたお母様とかも何人かいました。
5)終わりに:今年が最後?の展覧会
ホテルオークラ東京の「秘蔵の名品アートコレクション展」は、今年が24回目でしたが、現在建設中の新本館のオープンや2020年の東京オリンピックを控え、来年と再来年は開かれないそうです。
開かれるとしても3年後の2021年。といっても、2年も空いてしまうとスタッフも体制も変わってしまうので、展覧会を開くのが本業ではないホテルとしては再開は難しいかも知れません。私を含め、ぜひ再開して欲しいファンも多いと思いますが。
私も、2013年頃からほぼ毎年行っていて、ブロガーナイトに参加させていただいたり、色々思い出もあります。1人のファンとして、オークラさんの今後にぜひ期待したいと思います。
公式サイトはこちら